この事例の依頼主
20代 男性
相談前の状況
「ホストクラブを辞めたい」と言う20代前半のホストの男性が法律相談に来られました。聞くと、ホストクラブに800万円の借金があると言います。借金はすべて女性客がツケで飲んだ酒代でした。ホストが勤めていた店では、指名をしてくれた女性客がツケでお酒を飲んだ場合、その代金はホストが連帯保証することとされていました。ホストは、店長からは「借金を全額返すまで働いて返せ」と要求され、困り果てていました。
解決への流れ
労働者には「退職の自由」が認められています。これは憲法の「職業選択の自由」に由来する権利です。そこで、その男性の代理として、ホストクラブに退職の意思を通知しました。これだけで、法律的には問題なく退職をすることができました。さらにホストが負わされていた借金ですが、女性客の飲食代を店がホストに請求するためには、その都度、ホストと契約書面を交わさなければいけませんが、契約書面は交わしていませんでした。また飲食代も暴利で不当に高額なものであれば、そもそも女性客も払う義務がないものと考えられました。そこで、店と交渉し、男性が負わされていた借金をすべてチャラにし、逆に、未払いだった賃金を店に払わせて、男性は無事に円満に退職することができました。
ホストクラブやガールズバーなど夜の職場では、労働者が当然に持っている権利や負わされる理由のない義務についてほとんど知られていません。ホストも女性キャストももちろん労働者です。辞めたくなったら、使用者に何と言われようと辞めることができる権利があります。また、働いた時間に応じて給与を受け取る権利もあります。使用者が、給与から借金を天引きすることは違法行為ですので、天引きされるのを甘んじて受ける必要はありません。女性客の飲み代をホストが保証するという、使用者に都合のいい仕組み自体、法律上大きな問題があると言えます。