この事例の依頼主
70代 女性
相談前の状況
相談者は70代女性の方で、結婚50年目、子どもも成人に達していました。夫婦間で家計や財産の管理をめぐってトラブルになり、相談者が夫から半ば追い出される形で別居しました。夫名義の財産として、自宅不動産のほか、多数の預貯金や保険があるが、相談者側にも数百万円程度の預貯金があるという事情がございました。
解決への流れ
【相談結果】離婚調停を経て妻から離婚訴訟を提起したが、それに先立って夫名義の自宅不動産に処分禁止の仮処分を申し立て、それが認容されていました。その後、相手からも反訴として離婚請求訴訟が提起されました。裁判では、財産分与が争点となり、夫は「妻が夫の財産を隠して持ち去っている」と主張し、かつ年金分割についても「認めるべきではない」と主張しました。第1審では、財産分与について夫側の主張を「根拠に基づかない」としてほぼ全面的に退けましたが、一部こちらが自分名義の預貯金から別居直前に引き出したお金があったため、それは考慮され、結果夫に財産分与として約1000万円の支払いを命じる判決が下されました。その後夫は控訴したが、控訴審では、結局夫が妻に財産分与として約800万円で和解離婚し、年金分割も按分割合を0.5にすることで合意しました。
今回は、長年の結婚生活ゆえ、双方とも財産が多数あり、かなり複雑な審理状況となりましたが、全ての財産を項目立てて整理表をつくり、場合によっては調査嘱託によって別居時の金額を調査するなどして財産の整理に力を注ぎました。高齢の方の離婚はどうしても財産の状況が複雑になりがちですが、それでも一つ一つの財産を整理し、表にまとめることで少しでも迅速かつ充実した審理が可能になります。また、夫側に多数の財産があり、数百万以上の支払が見込まれる場合は、今回のように保全処分を申し立て、担保を確保すると同時に、相手に対して早期解決へのインセンティブを与えることも一つの手でしょう。本件では、結局控訴審で第1審の判決が認めた金額より少ない額で和解しましたが、高齢の方の場合、すでに年金を受給できる年齢になっており早期に離婚を実現する必要性がある場合が多いです。また和解の方が相手による任意の支払が期待でき、それによって判決のリスクや今後の執行にかかる手間、費用を回避できることがあります。したがって、複雑な財産状況でも一つ一つ解きほぐして整理し、相手方にもきちんと理解してもらった上で和解した方が、結果的には良い場合になることが多いと考えます。