この事例の依頼主
50代 女性
ご依頼者様は、長年夫の不貞行為に悩まされていました。そこで、離婚を決意されました。ご依頼者様は、母親の生前に多額の贈与を受けておりました。そして、ご依頼者様は、かかる贈与された金銭を住宅ローンの支払いに充てていたのです。そのため、財産分与により自宅を取得することを何よりも希望されました。相手方に自宅を渡すようなことがあれば、母親から贈与されたお金が無駄になってしまうからです。
母親から贈与された金員は財産分与の対象にはなりません。夫婦が婚姻中につくったお金ではないからです。このように財産分与の対象にならない財産を特有財産(とくゆうざいさん)といいます。しかし、お金に色はありません。このお金は財産分与の対象となるお金、このお金は特有財産で財産分与の対象にならないということはありません。したがって、夫婦の財産のうち、どの部分が特有財産といえるかについては、よく問題となるのです。本件は、母親から贈与を受けた金員を住宅ローンの支払に一部充てたという事案でした。このような場合、今ある自宅の価値は、夫婦のお金によって形成されている部分と特有財産(贈与金)によって形成されている部分があるということができます。特有財産(贈与金)は自宅の価値に変化している(化体している)と主張するのです。もう少し具体的にいうと、自宅に対するご依頼者様の取り分(持分)と相手方の取り分の割合は、特有財産で支払った金額+夫婦のお金で住宅ローンを支払った金額/2 : 夫婦のお金で住宅ローンを支払った金額/2になります。ですから、当職は、特有財産は自宅の価値の一部に化体されているので、ご依頼者様の自宅の取り分(持分)は50:50ではない、もっと多いのだと主張することにしました。その上で、相手方の少ない取り分については少しのお金を支払うことで解決しましょうと提案しました。
不貞を原因とした熟年離婚の事案でした。当事者間には婚姻中に購入した自宅がありました。ご依頼者様は母親から生前贈与された大金を住宅ローンの返済に充てていたため、財産分与で相手方に自宅を渡すようなことになれば、母親からもらったお金が無駄になると考え、自宅の取得を強く希望されていました。そのため、財産分与で自宅を獲得することが主要命題となった事案でした。争点は自宅の帰趨に尽きなかったこともあり、主張は大きく対立し、離婚訴訟を提起しなくてはなりませんでした。当職は、生前贈与されたお金は特有財産であり、そのお金を住宅ローンの支払いに充てたというのであれば、特有財産は自宅に一定程度化体されているため、両当事者は50:50とはいえない、つまり、特有財産分ご依頼者様の取り分は多いはずであるという主張をし、最終的に裁判所と相手方にこれを認めさせました。結果、ご依頼者様は自宅について相手方にわずかな代償金を支払うだけで自宅を取得することができました。希望であったご自宅を手にして大変喜んでおられたご依頼者様をみて、当職も大変嬉しく思いました。ありがとうございました。