この事例の依頼主
40代 女性
相談前の状況
会社を経営していた父親が亡くなり、地元から離れた前妻の子らと地元に残った後妻の子らとで遺産分割をすることになった(依頼者は前妻の子)。主な財産は預貯金と事業用不動産。土地は地方の小さな都市にあり多用途への転用ができないわけではないが、建物は転用が難しい工場。また、会社の帳簿には父親と会社との間のお金の貸し借りがかなり記載されているが、結局返したの返していないのか全くわからない。前妻の子らと後妻の子らとの協議なので、もめてしまうととことんまで行ってしまう可能性があるので、なんとか円満に収めたいということでご相談・ご依頼となりました。
解決への流れ
まず、相手方に遺産分割について丁寧な説明文を送付し、色々難しい問題がある案件なので、弁護士に依頼するよう伝えました。その点理解を得られ、相手方に地元の弁護士が代理人としてついたため、弁護士間でやり取りを行い、とりあえず事業用土地と事業用建物の価値や転用可能性の検討を不動産会社や税理士等と連携して行いました。その上で転用不能な建物は遺産分割との関係では0円評価とすることで合意しました。会社との貸し借りについては、帳簿を精査し、確認できる範囲では貸借がだいたい釣り合っていることを根拠を示して相手方弁護士に説明して、これも0円とすることで合意しました。その上で、税理士と調整し、相続税の軽減や支払い方法を工夫して納税の段取りを付け、土地については共同で売却先を探すこととして、預貯金の分割や葬儀・取壊し費用の清算を行い遺産分割協議書を作成し、遺産分割は終了。その後も双方の弁護士が連絡し、分割から1年ほどで土地の売却先も決まりました。
事業をやっていた方が亡くなると評価が難しい財産が遺産に含まれることがあります。その評価や分割方法についての意見の違いを発火点に相続人間の争いが激化することも珍しくなく、特にこの件は普段あまり交流がない前妻の子と後妻の子が当事者となっており、紛争化すれば泥沼となる可能性がありました。このような場合には、財産評価、転用可能性の検討、売却可能性の検討、帳簿の精査といった客観的な作業をコツコツと積み重ねることが円満な解決につながりますので、最初に相手方に遺産分割について説明し、弁護士に代理人についてもらうよう要請することからはじめました。その後は、専門家や業者と連携しながら、客観的で現実的な検討を行い、依頼者にも相手方にも逐次説明して交渉を進めました。