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婚約者は「既婚」だった。婚姻届は受理されず、仕事も結婚も失った女性
2018年10月04日 09時12分

婚姻届を提出したら、実は相手が「元妻」と離婚していなかったことが分かったーー。幸せの絶頂から地獄へ突き落とされた女性から、弁護士ドットコムに相談が寄せられました。

女性は2年前の冬、男性と交際を開始しました。男性は4年前に元妻と別居し、3年前に離婚しています。

そして昨年秋、市役所に婚姻届を提出。しかし、翌朝、市役所から「(男性が)他の方と婚姻関係にあるので受理できません」と連絡が来ました。男性は元妻が署名した離婚届を提出していなかったと言います。

結局、男性は正式に離婚手続きを始めましたが、離婚調停で結論は出ず、離婚の行方は裁判に持ち越されることに。女性は「そもそも既婚者だとわかっていたら付き合いもしなかったし、ましてや結婚まで考えません」と訴えています。

女性は会社には「退職する」とも伝え、結婚式場も予約していました。「精神的にも結婚は無理」と話していますが、男性から慰謝料はもらえるのでしょうか。澤藤亮介弁護士に聞きました。

婚姻届を提出したら、実は相手が「元妻」と離婚していなかったことが分かったーー。幸せの絶頂から地獄へ突き落とされた女性から、弁護士ドットコムに相談が寄せられました。

女性は2年前の冬、男性と交際を開始しました。男性は4年前に元妻と別居し、3年前に離婚しています。

そして昨年秋、市役所に婚姻届を提出。しかし、翌朝、市役所から「(男性が)他の方と婚姻関係にあるので受理できません」と連絡が来ました。男性は元妻が署名した離婚届を提出していなかったと言います。

結局、男性は正式に離婚手続きを始めましたが、離婚調停で結論は出ず、離婚の行方は裁判に持ち越されることに。女性は「そもそも既婚者だとわかっていたら付き合いもしなかったし、ましてや結婚まで考えません」と訴えています。

女性は会社には「退職する」とも伝え、結婚式場も予約していました。「精神的にも結婚は無理」と話していますが、男性から慰謝料はもらえるのでしょうか。澤藤亮介弁護士に聞きました。

●妻と離婚するためには裁判という選択肢も

「現在の日本の婚姻関係は『法律婚』を前提としています。そのため、事前にどのような取決め(離婚協議書や公正証書)があったとしても、役所に離婚届を提出し受理されていない限り、離婚は法律上認められません」

澤藤弁護士はそう指摘します。男性はどうすれば「元妻」と離婚できるのでしょうか。

「妻と離婚するためには、再度調停をしたり、離婚訴訟で認容判決を受ける必要が出てきます。訴訟では『一旦離婚に合意したものの、妻がその合意を破って離婚届を提出していなかった』という事情は、離婚事由の検討に際し、男性側に有利な事情とされるかと思われます」

離婚についてお互いに合意していたのに、提出していなかったというのは衝撃的です。法的責任も問うことができるのでしょうか。

「妻において離婚を合意していたにもかかわらず提出していなかった点は、道義的な責任は一定程度あるかもしれませんが、法的責任まで追及することは一般的には難しいでしょう」

●男性に故意や過失があったかがポイント

交際していた女性は「精神的にも結婚は無理」と話しています。慰謝料請求はできますか。

「仮に男性が、実はまだ婚姻している状態であることを認識していたり(故意)、不注意で認識していなかった場合(過失)であれば、女性は男性に対し、人格権侵害や婚約不当破棄を理由とする慰謝料請求を検討することになるでしょう。

一方で、男性にそのような故意・過失がないと判断される場合は、慰謝料請求が認められないことになります」

ポイントはどのような点でしょうか。

「今回のケースでは、(1)男性が妻と離婚協議を行った際、妻に離婚届の提出を委ねてしまった点に問題はなかったか、(2)離婚協議後、戸籍で自分の身分関係を確認することをせずに女性と交際、結婚を決意したことに問題がなかったのか、などが問題となってくるかと思われます。

また、婚約が不当に破棄されたことを請求の根拠とする場合、今回のケースでは、男性側による破棄と言えるかも問題となってくるでしょう。男性に対して慰謝料を請求できるのかどうか検討してみます。

仮に男性側が慰謝料につき争う場合は、やはり裁判上での決着をせざるを得ませんが、今回のご事情からすれば、男性の内心の問題(故意・過失)にかかわらず、女性側に退職や結婚式場のキャンセルに伴う損失もあるようです。

まず第一に、男性においてどの程度の金銭的負担を負うこととするのかについて、当事者間で話し合いが必要だと思いますが、精神的損害による慰謝料のほか、財産的損害(退職に伴う逸失利益など)があったことも請求されてよろしいかと思われます」

(弁護士ドットコムニュース)

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