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我が社のFacebookページに「いいね」せよ! 会社の「業務命令」拒否できる?
2013年05月17日 15時00分

友人の近況を知り、交流を楽しめる米国発のSNS「Facebook」。「いいね!」ボタンや情報共有機能などが人気で、日本国内での利用者はまもなく2000万人に達しようとしている。ところが利用者が増えたことで、「企業の宣伝ツール」としての活用も活発化。従業員がFacebook上で企業PRを強要されて、あつれきが生じるケースも出てきた。

多くの企業は独自のFacebookページで宣伝を行なっているが、そのページの存在を広く知ってもらうため、従業員に宣伝を義務づける企業があるようなのだ。企業のFacebookページの「いいね!」ボタンを押すことを求めるのはもちろん、自分が写っている写真と企業をタグ付けしたり、宣伝記事のシェアを迫ることもあるいう。

もともと個人のプライベートな利用で使っていたにもかかわらず、会社のPR活動を求められ、従業員は困惑しているというわけだ。このような会社からの要請に対して、従業員はどこまで従わなければならないのか。精神的な苦痛を感じた場合、上司や会社から慰謝料をもらうことはできるのだろうか。TwitterなどSNSで積極的な情報発信をしている佐々木亮弁護士に聞いた。

●「業務命令」としては不当。お願いならありだが・・・・。

「結論から言うと拒否できます。タグ付け、シェア、さらには『いいね!』ボタンを押すこともです。もちろん、拒否したことを理由として会社がその労働者を不利益に扱うことも許されません。会社の強要度合いが強く、悪質な場合は慰謝料も認められる可能性があるでしょう」。佐々木弁護士はこう断言する。

——なぜ、そういう結論が導き出されるのでしょうか。

「この問題は、『業務命令が労働者のプライベート空間にどこまで及ぶのか』という問題です。FacebookというSNSを例にするとやや分かりにくくなっていますが、たとえば『労働者の自宅の壁に会社の広告看板を設置せよ』という業務命令はどうでしょうか。こんな命令に労働者は従う義務はありませんね。

最高裁も、労働者は『企業の一般的な支配に服するものということはできない』(富士重工業事件・最判昭和52年12月13日)としています。それと同様に、個人のプライベートなものとして利用していたFacebookなどの利用についても、会社が『命令』として何らかの行為を強制することはできません」

——つまり、「業務命令」は従業員のFacebook上での私生活にまでは及ばないということですね。では、「お願い」だとどうでしょうか。

「もちろん、会社が労働者に『お願い』をすることはできるでしょう。これに労働者が任意に従うのは自由です。しかし、そのような形で『いいね!』の数を稼ぐのは、ステマと等しいか、紙一重になってしまいますね」

所属会社のイメージアップは、働く人間にとっても利益になるはずだ。それなのに会社が命令やお願いをしないといけないのは、サービスに自信がないと思われても仕方がない気がする。人の考えは文章にもにじみ出る。「ステマ疑惑」で評判を落とすよりは、個人の自主性に期待した方が、宣伝効果もあがるのではないだろうか。

(弁護士ドットコムニュース)

友人の近況を知り、交流を楽しめる米国発のSNS「Facebook」。「いいね!」ボタンや情報共有機能などが人気で、日本国内での利用者はまもなく2000万人に達しようとしている。ところが利用者が増えたことで、「企業の宣伝ツール」としての活用も活発化。従業員がFacebook上で企業PRを強要されて、あつれきが生じるケースも出てきた。

多くの企業は独自のFacebookページで宣伝を行なっているが、そのページの存在を広く知ってもらうため、従業員に宣伝を義務づける企業があるようなのだ。企業のFacebookページの「いいね!」ボタンを押すことを求めるのはもちろん、自分が写っている写真と企業をタグ付けしたり、宣伝記事のシェアを迫ることもあるいう。

もともと個人のプライベートな利用で使っていたにもかかわらず、会社のPR活動を求められ、従業員は困惑しているというわけだ。このような会社からの要請に対して、従業員はどこまで従わなければならないのか。精神的な苦痛を感じた場合、上司や会社から慰謝料をもらうことはできるのだろうか。TwitterなどSNSで積極的な情報発信をしている佐々木亮弁護士に聞いた。

●「業務命令」としては不当。お願いならありだが・・・・。

「結論から言うと拒否できます。タグ付け、シェア、さらには『いいね!』ボタンを押すこともです。もちろん、拒否したことを理由として会社がその労働者を不利益に扱うことも許されません。会社の強要度合いが強く、悪質な場合は慰謝料も認められる可能性があるでしょう」。佐々木弁護士はこう断言する。

——なぜ、そういう結論が導き出されるのでしょうか。

「この問題は、『業務命令が労働者のプライベート空間にどこまで及ぶのか』という問題です。FacebookというSNSを例にするとやや分かりにくくなっていますが、たとえば『労働者の自宅の壁に会社の広告看板を設置せよ』という業務命令はどうでしょうか。こんな命令に労働者は従う義務はありませんね。

最高裁も、労働者は『企業の一般的な支配に服するものということはできない』(富士重工業事件・最判昭和52年12月13日)としています。それと同様に、個人のプライベートなものとして利用していたFacebookなどの利用についても、会社が『命令』として何らかの行為を強制することはできません」

——つまり、「業務命令」は従業員のFacebook上での私生活にまでは及ばないということですね。では、「お願い」だとどうでしょうか。

「もちろん、会社が労働者に『お願い』をすることはできるでしょう。これに労働者が任意に従うのは自由です。しかし、そのような形で『いいね!』の数を稼ぐのは、ステマと等しいか、紙一重になってしまいますね」

所属会社のイメージアップは、働く人間にとっても利益になるはずだ。それなのに会社が命令やお願いをしないといけないのは、サービスに自信がないと思われても仕方がない気がする。人の考えは文章にもにじみ出る。「ステマ疑惑」で評判を落とすよりは、個人の自主性に期待した方が、宣伝効果もあがるのではないだろうか。

(弁護士ドットコムニュース)

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