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葬式はしたくない、海や山に散骨して欲しい…法律では認められる?
2016年11月08日 00時00分

「お葬式って絶対しないといけないんですか?」。そんな質問が、子育て情報サイト「ママスタ」の掲示板に寄せられました。(実際に寄せられた投稿「お葬式って絶対しないといけない?」はこちら→http://mamastar.jp/bbs/comment.do?topicId=2661499 )。

投稿した人は「しなくていいのなら自分が死んだとき、旦那が死んだとき両方したくない」と言います。しかし、この投稿に対して、「直葬希望だったけど、葬儀会社に断られて直葬できなかったみたい」「バイト先の人が普通にセダンの車の後部席で何人かで抱いて帰ったって。膝に寝かせた状態で」などと体験談が並びました。

葬式を行わないだけでなく、墓を作らない、仏壇をもうけないなど、死後の弔いのあり方をめぐっては様々な願いが聞かれます。しかし、遺族が法的な責任を問われることにならないのでしょうか?死後の弔い方をめぐる法律知識について、井上明彦弁護士の解説をお届けします。

「お葬式って絶対しないといけないんですか?」。そんな質問が、子育て情報サイト「ママスタ」の掲示板に寄せられました。(実際に寄せられた投稿「お葬式って絶対しないといけない?」はこちら→http://mamastar.jp/bbs/comment.do?topicId=2661499 )。

投稿した人は「しなくていいのなら自分が死んだとき、旦那が死んだとき両方したくない」と言います。しかし、この投稿に対して、「直葬希望だったけど、葬儀会社に断られて直葬できなかったみたい」「バイト先の人が普通にセダンの車の後部席で何人かで抱いて帰ったって。膝に寝かせた状態で」などと体験談が並びました。

葬式を行わないだけでなく、墓を作らない、仏壇をもうけないなど、死後の弔いのあり方をめぐっては様々な願いが聞かれます。しかし、遺族が法的な責任を問われることにならないのでしょうか?死後の弔い方をめぐる法律知識について、井上明彦弁護士の解説をお届けします。

●お葬式はしなくても・・・

お葬式を義務付ける法律などは存在しません。憲法が信教の自由(20条)を保障していることなどを考えれば、お葬式をするしないは、個人の自由であり、しないことに法的な問題はないと考えられます。

ただ、お葬式をしないからといって、その後の何の手続きもせずに、死体を放置してよいわけではもちろんありません。まず、戸籍法により、同居の親族等には、死亡届の提出義務が課されています。提出しなければ「5万円以下の過料(行政罰の一種)」の制裁があります。

次に、死体を埋葬すべき義務がある者が、そのまま死体を放置していれば、「死体遺棄罪(刑法190条)」に該当します。埋葬義務者が誰かについて、明確に定めた法律等はありませんが、同居の親族には埋葬義務があると考えられています。

死体の埋葬方法については、「墓地、埋葬に関する法律」(以下「墓埋法」といいます。)の4条が、墓地外の埋葬(死体を土中に葬ること)又は焼骨の埋蔵、及び火葬場外の火葬を禁止しています。これに反する行為は、墓埋法21条により罰金等の罰則が科されていますし、死体遺棄罪に該当する場合も考えられます。

なお、死者の骨灰を海、山などに撒く散骨は、墓埋法がそもそも想定していないため、同法に抵触しないというのが一般的な考えです。死体遺棄に該当するかについても、葬送のための祭祀で節度をもって行われる限りは問題ないとされています(ただし、条例で散骨を禁止している自治体もあります)。

死体を埋葬、火葬するためには、墓埋法により市町村長の許可が必要とされていますので、申請を出して、許可証の交付を受けなければなりません。

●「お葬式の形はそれぞれ」

死体を火葬場等へ搬送する方法について、法律は特に規定は設けておらず、例えば、自家用車で搬送することも法的には問題ありません。

ただ、自家用車などで死体を搬送した場合には、法律上の根拠はありませんが、火葬場が事実上受け付けを拒否したり(法的には自家用車であることを理由に拒否は認められませんが)、警察に呼び止められて犯罪への関与を疑われるなどのトラブルが生じる可能性もあるようです。

なお、死亡届の提出や火葬許可証の申請手続きについては、お葬式を葬儀業者に依頼した場合には、業者が同居の親族の代理人として行ってくれるのが一般的です。

最初に述べたように、葬儀をしないのも自由です。ただ、葬儀をしないからといって、何もせずにそのまま放置しておいて良いということではありません。

また、故人のことを大事に思っていたのであれば、全く弔いをしないというのも現実的ではないと思います。お葬式にも、本当に大規模なものからいわゆる家族葬まで色々なものがありますから、予算の制約等があるのであれば、それに合わせた形を考えてみられるのもよいと思います。

(弁護士ドットコムライフ)

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