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「NHK受信料は税金と同じものだから払わない」在日米軍の主張をどうみるべきか?
2014年11月10日 11時42分

沖縄などで活動する在日米軍が「NHK受信料」の支払いを拒んでいることが問題となっている。NHKは、日本国民と同じように在日米軍に対しても、放送受信料の支払いを求めている。しかし在日米軍は、受信料が「租税または類似の公課」にあたるとして、日米地位協定を理由に支払いを拒否しているのだ。

日米地位協定によれば、在日米軍は、日本における財産について「租税または類似の公課」を課されない、ということになっている。NHK受信料は租税と同じようなものだから支払う必要はない、という理屈のようだ。

たしかに番組を見ようと見まいと、テレビがあれば徴収を求める点で、NHKの受信料の仕組みが「テレビ税」と受け止められるのは分からなくもない。「NHK受信料は税金」という米軍の主張を弁護士はどう見ているだろうか。租税の問題にくわしい大和弘幸弁護士に聞いた。

沖縄などで活動する在日米軍が「NHK受信料」の支払いを拒んでいることが問題となっている。NHKは、日本国民と同じように在日米軍に対しても、放送受信料の支払いを求めている。しかし在日米軍は、受信料が「租税または類似の公課」にあたるとして、日米地位協定を理由に支払いを拒否しているのだ。

日米地位協定によれば、在日米軍は、日本における財産について「租税または類似の公課」を課されない、ということになっている。NHK受信料は租税と同じようなものだから支払う必要はない、という理屈のようだ。

たしかに番組を見ようと見まいと、テレビがあれば徴収を求める点で、NHKの受信料の仕組みが「テレビ税」と受け止められるのは分からなくもない。「NHK受信料は税金」という米軍の主張を弁護士はどう見ているだろうか。租税の問題にくわしい大和弘幸弁護士に聞いた。

●米軍が根拠とする「日米地位協定13条」とは?

「まず、日米地位協定にはどのように書いてあるのか、見てみましょう」

大和弁護士はこう切り出した。

「日米地位協定13条には、こう書かれています。

『合衆国軍隊は、合衆国軍隊が日本国において保有し、使用し、又は移転する財産について租税又は類似の公課を課されない』

米軍は、NHK受信料がこの『租税または類似の公課』にあたるから、支払う必要はないと主張しているわけです」

では、この米軍の主張は正しいのだろうか。

「NHKは、放送法に基づき設立された法人です。

放送法では、NHKの放送を受信できる受信設備(テレビ)を設置した者は、NHKと受信契約を結ばなければいけないとして、契約の強制を義務付けています。

このことから、テレビを設置した者はNHK受信料を支払う義務があると、一般には解されています」

在日米軍の人たちの中にも、テレビを自宅に設置している家庭は当然あるはずだが・・・

「いわゆる『日米地位協定』によって、アメリカ合衆国軍隊の構成員等は、日本国における租税を免除されています。

米軍の主張は、『受信料の支払いを強制される=租税』というロジックだと思いますが、少なくとも『租税』という地位協定の文言の解釈としては無理があるように思います」

●米軍の主張に「無理がある」のはなぜか?

どういった点が「無理がある」と考えているのだろうか。

「一般に『租税』には、次の3つの特徴があります。

(1)国または地方公共団体が徴収の主体であること、

(2)法令に基づくこと

(3)一方的義務として課す無償の金銭的給付であること」

この特徴からすると、NHKは?

「NHKは国または地方公共団体ではありませんので、(1)租税徴収の主体ではありえません。

また、NHK受信料は『放送を見ることができるサービス』の対価と考えられます。そのため、(3)『無償の金銭的給付』という租税の要件にも抵触します。

したがって、NHK受信料は『租税』とはいえないと思います

また、『公課』とは簡単にいえば、国や地方公共団体に支払う公の負担金です。健康保険料や社会保険料などがこれにあたります。

NHKは、国や地方公共団体とは言えないので、こうした公の負担金とも性質が異なります。そのため、『類似の公課』にも該当しないと考えられます」

●米国には「公共放送」という概念がない

では、在日米軍の構成員も、NHKの受信料をしっかり支払うべきということか?

「米国には、受信契約を義務付けられた『公共放送』という概念自体がないようで、NHK受信料については理解に苦しむのかもしれません。その点は、日本国政府が積極的に理解を求めてゆくべき事柄でしょう。

なお、滞納されたNHK受信料は『5年の時効にかかる』という最高裁の判断が近時出されました。仮に、米軍がNHK受信料を支払うべきだとしても、5年より前にさかのぼって徴収することはできないということになるでしょう」

大和弁護士はこうのように指摘していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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