5034.jpg
道路に寝そべった男性、ひき逃げされた「被害者」なのに書類送検…なぜなのか?
2017年08月03日 08時59分

2017年5月に京都市でひき逃げされ、重傷を負った男性(35)について、京都府警が道交法違反(道路における禁止行為)の疑いで書類送検していたことが分かった。

報道によると、男性は泥酔して市道の中央付近で寝そべっていたところを、トラックにひかれ、左脚に全治1か月の重傷を負った。トラックの運転手は道交法違反罪で罰金40万円の略式命令を受けている。

今回、被害者である男性も道交法違反の疑いで書類送検されたのはなぜなのか。また寝そべっていたことで、被害者が損害賠償請求をする場合の請求額にも影響してくるのか。木野 達夫弁護士に聞いた。

2017年5月に京都市でひき逃げされ、重傷を負った男性(35)について、京都府警が道交法違反(道路における禁止行為)の疑いで書類送検していたことが分かった。

報道によると、男性は泥酔して市道の中央付近で寝そべっていたところを、トラックにひかれ、左脚に全治1か月の重傷を負った。トラックの運転手は道交法違反罪で罰金40万円の略式命令を受けている。

今回、被害者である男性も道交法違反の疑いで書類送検されたのはなぜなのか。また寝そべっていたことで、被害者が損害賠償請求をする場合の請求額にも影響してくるのか。木野 達夫弁護士に聞いた。

●妨害になる寝そべりや酒に酔ってのふらつきも禁止

道路交通法の「道路における禁止行為」とはどういうものか。

「道路交通法には道路上でしてはいけない『禁止行為』が幾つか規定されています(道路交通法76条)。たとえば、交通の妨害になるようなものを道路に置く、石などを道路に投げる、信号機が隠れるような看板を設置する等です。

これらの行為が禁止されているのは、もちろん、交通の安全のためです。『禁止行為』の中に、『酒に酔って交通の妨害となるような程度にふらつくこと』や『交通の妨害となるような方法で寝そべること』も含まれています。」

今回のように、ひき逃げの被害者が書類送検されることはかなり珍しいのではないか。

「今回の書類送検はかなり異例です。道路に商品を出したり、看板をおいたりする行為はよく見かけます。酔っ払って千鳥足の人もときどき見かけます。それでも、悪質でない場合は取り締まらないことが多いと思われます。件数が多すぎて全てを取り締まれないという事情もあるでしょう。

道路に寝そべる行為も『交通の妨害となるような』場合は本来違法です。しかし、危険性が低い場合は警察官が注意したり、その人を保護したりして、特に刑罰を与えることは少ないと思われます」

●大きな事故につながっていた可能性もあり、異例の書類送検

それほど今回のひき逃げ被害者の行為は、悪質だったということか。

「今回の事案では、実際に、トラックにはねられています。気の毒といえば気の毒ですが、報道によると、寝そべった道路は『幹線道路』だとされています。

通常、ドライバーは道路に人が寝そべっていることを想定して運転していません。もし、ドライバーが被害者に気付いて急ハンドルを切ったり、急ブレーキを踏んでいれば、別の大きな事故につながった可能性もあります。そのようなことを考慮して、異例の書類送検に踏み切ったのでしょう」

今回の被害者がトラックの運転手に損害賠償請求をした場合、損害賠償額にも影響してくるのだろうか。

「今回の事案では、民事の損害賠償の場面でも大幅な過失相殺が行われると思われます。夜間、道路に寝そべっている人を発見して避けることは容易ではないからです。今回の事案の場合、詳細の事情にもよりますが、被害者の過失割合はおおよそ60%〜70%と認定されるものと思われます」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る